文献史学とは、権力史学に堕し易いものである。
そもそも、文字とは古くから統治のために生み出されたものである。
意志を伝える「ことば」がどんな文明にも存在するのに対し、意志伝達の確実性とその残存性を重視する「文字」は、宗教を含む権力と切り離しては生まれ得ないものであった。
そうした性質故に、文献史学では本来の民俗習俗に基づいた史論は不可能との発想から生まれたのが民俗学である。
しかし、その発想故文献史学を否定しすぎるきらいがあった。
網野は、この溝を埋め、既存の常識を疑い、歴史学に新たな扉を開いてみせた。
正しいこと、正直なこととは何かということも教えてくれた。
単に学者としてだけでなく、人として尊敬する。
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