そんなに動物が好きなほうではない。
だが、猫には特別な感情をおこさせる何かがある。
猫と女は呼べば逃げるし捨て置けば寄ると言ったのはメリメだが、まさかそれだけではあるまい。
一人暮らしを始めた頃。
なかなか会えない種類の女と付き合い、途方に暮れて夜の海岸の堤防に座り、ひとり波を眺めていた。
ふと気付くと、すぐ隣で一匹の猫が同じ姿勢で波を眺めていた。
ああ、きっとコイツもなんだな。何故だか自然にそう思い、家まで抱き帰った。
だが、鍵を開けるため手を離した瞬間、逃げ去ってしまった。
全ては、独り善がりの勘違いだったのだ。
あの猫は今どうしているだろう。6年。死んだかもしれないね。
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