実家のある町の市立図書館では、名作映画のビデオを無料で閲覧できる。
初めて観たのは、大学の芸術論の論文資料としてだった。興味はなかった。
だが、その美しい映像世界の虜になるまで、時間はかからなかった。
一人一人の表情、場面の情景、全てが完全な客体として捉えられている。
そこに、画面の中に、我々の居場所はないのだ。
まるで、神として下々の者を眺めるかのような気分である。
そこで繰り広げられる、弱く悲しく切ない人間の情緒と相まって、私達を、
私達の生活を別の世界から映し出したようである。
小津安二郎は、他の誰にも撮れないものを撮り続けた。
日本映画史上最高の天才だったと思う。
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